電子カルテ、レセコン、オンライン資格確認の端末、医療機器、予約・会計のシステム、待合室のWi-Fi、防犯カメラ。いまのクリニックは、開院の日から多くの機器がネットワークにつながって動き始めます。それでも開業準備では、内装や医療機器に比べてネットワークの検討が後回しになりがちです。この記事では、開業・移転を控えた医科・歯科のクリニック向けに、院内ネットワークを安全に組み立てる考え方と進め方を解説します。
この記事の結論
- 院内のネットワークは「院内業務」「医療機器」「患者用Wi-Fi」「設備」の系統にVLANで分けるのが基本です。
- 配線は内装工事と同時に行うのが効率的です。開業日から逆算し、内装設計の段階で要件をまとめます。
- LAN工事業者の担当は配線とネットワーク機器の設計・設定です。電子カルテなどの要件はベンダーの指示に従い、ガイドライン対応の最終判断は院側とベンダーで決めます。
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クリニックの院内ネットワークには何がつながるのか
電子カルテとレセコンを中心に、性格の異なる機器が同じ建物の中でつながります。
- 電子カルテ:電子カルテとは、診療記録を電子的に保存・閲覧するシステムのことです。院内にサーバーを置く型とクラウド型があります
- レセコン:レセコンとは、診療報酬の請求書(レセプト)を作成するコンピューターのことです
- 医療機器:デジタルX線や超音波、歯科用CTなど画像を扱う機器です
- オンライン資格確認の端末:患者さんの保険資格をオンラインで確認する端末です。オンライン資格確認は2023年4月から保険医療機関・薬局で原則義務化されています
- 予約・受付・会計:Web予約や受付表示、自動精算機、決済端末などです
- 患者用Wi-Fi・防犯カメラ:待合室のWi-Fiと、入口や駐車場のカメラです
患者さんのスマートフォンと電子カルテが同じネットワークにある状態は避けるべき構成であり、ここから設計が始まります。
医療機関を狙うサイバー攻撃と、ガイドラインの位置づけ
国内でも医療機関がランサムウェアの被害を受け、診療の停止や制限に追い込まれた事例が報じられており、規模の小さいクリニックも無関係ではありません。
ランサムウェアとは、データを暗号化して使えなくし、復旧と引き換えに金銭を要求する不正なプログラムのことです。報じられた事例では、保守用のリモート接続機器の脆弱性や、外部の委託先とつながる経路が侵入口になったとされるものもあります。ネットワークの設計で担えるのは、侵入の入口を減らすことと、被害を広げないことです。
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、2023年5月に第6.0版へ改定されています(最新の内容は同省のサイトでご確認ください)。どの対策をどこまで行うかの最終判断は、院側とベンダーが相談して決めるもので、LAN工事業者はその方針をネットワークとして形にする役割です。
ポイント:保守用のリモート接続は「どのベンダーが・どの機器で・いつ接続するか」を一覧にしておくと、使っていない経路を閉じる判断がしやすくなります。
電子カルテを守るLAN設計:VLANで系統を分ける
院内のネットワークは、VLANで「院内業務」「医療機器」「患者用Wi-Fi」「設備」の系統に分けるのが基本です。VLANとは、同じスイッチや配線を使いながら、設定でネットワークを複数の独立した区画に分ける仕組みのことです。
| 系統 | 主な機器 | 通信の考え方 |
|---|---|---|
| 院内業務 | 電子カルテ端末、レセコン、受付・会計PC、複合機 | 必要な通信だけ許可。患者用Wi-Fiからは届かない構成に |
| 医療機器 | 画像診断装置、画像の保存・閲覧用の機器 | 必要な端末とだけ通信。外部接続はベンダー指定の範囲に |
| 患者用Wi-Fi | 待合室の患者さんのスマートフォン | インターネットのみ。端末どうしの通信も遮断 |
| 設備 | 防犯カメラ・録画装置、IP電話 | 他の系統と分け、録画の閲覧は管理者に限る |
オンライン資格確認の端末をどの系統に置くか、回線をどうつなぐかは、導入ベンダーの指示に従います。待合室のWi-Fiの考え方は店舗Wi-Fiの客用・業務用を分ける記事、VLANの仕組みはVLANの基本を解説した記事で紹介しています。
医療機器の要件は配線設計の前に集める
画像系の医療機器は、IPアドレスや通信の相手先がメーカー側で決まっていることが多く、院側で自由に更新できない機器もあります。医療機器のネットワーク要件は、配線設計より前にベンダーから集めておくと手戻りを防げます。
UTMとUPSで「出入口」と「電源」を守る
インターネットとの出入口にはUTMを、サーバーやネットワーク機器の電源にはUPSを入れておくと、攻撃と停電の両方に備えられます。
UTMとは、ファイアウォールやウイルス対策など複数のセキュリティ機能を1台にまとめた機器のことです。院内の出入口に置き、内外の不審な通信を監視します。多くの機種は防御用の情報を更新するライセンス契約が前提のため、契約期間の管理も運用に含めます。
UPSとは、停電時にバッテリーから電気を送り続け、機器を安全に止める時間をつくる装置のことです。院内にサーバーを置く電子カルテでは、突然の電源断がデータの破損につながるおそれがあるため、停電を検知したら自動でシャットダウンする設定までしておくと安心です。台風や雷への備えは台風・停電時のネット対策の記事でも解説しています。
バックアップを院内のネットワークにつながった機器だけに置いていると、ランサムウェアの被害がバックアップにまで及ぶおそれがあります。バックアップの方式はベンダーと確認しておきましょう。
開業日から逆算する、院内ネットワーク工事の進め方
配線は内装工事と同時に行うのが効率的です。天井や壁が開いているうちに通せば露出配線を減らせ、工期と費用も抑えやすくなります。
- 内装設計の段階(開業の半年ほど前):診察室や受付の配置が見えた時点で、機器の置き場とLANコンセントの位置を図面に落とし込みます
- ベンダーから要件を集める:各システム・医療機器に必要な回線や通信先、オンライン資格確認の接続方法を確認します
- 光回線の申し込み(開業の3か月前が目安):開通まで時間がかかることがあるため、早めに申し込みます
- 内装工事中の配線:天井や壁が開いているうちにLANやAP・カメラへの配線を済ませ、ラックやUPS用のコンセント位置を電気工事と調整します
- 機器の設定と動作確認(開業の1か月ほど前〜):UTM・スイッチ・APを設定してベンダーに引き継ぎ、受付から会計、レセプト作成までを実機で確認します
時期は目安で、医療機器の搬入や内装の工程によって前後します。事務所移転と共通する段取りはオフィス移転のLAN工事スケジュールの記事も参考になります。内装業者との打ち合わせにLAN工事業者も同席できると、配線ルートと機器の置き場所を一度に決められます。
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医院のLAN工事は誰が何を担当するのか
LAN工事業者の担当は、配線と、ルーター・UTM・スイッチ・APなどネットワーク機器の設計・設定です。システムの設定はベンダー、運用ルールとガイドライン対応の最終判断は院側が担います。
| 担当 | 主な役割 |
|---|---|
| 院側(院長・事務長など) | 運用ルールの決定、ガイドライン対応の最終判断 |
| 電子カルテ・レセコンのベンダー | システムの導入・保守、オンライン資格確認の接続、バックアップ方式の提案 |
| 医療機器のベンダー | 装置の設置・保守、ネットワーク要件の提示 |
| LAN工事業者 | 配線、ネットワーク機器の設計・設定、配線図の作成 |
「誰が、どこまで」を開業前に書面にしておくと、トラブル時の切り分けが早くなります。配線図とラベルの残し方はオフィスのLAN配線整理の記事が参考になります。
業者に頼まなくてよい部分もあります
ベンダーが配線やネットワーク機器まで一式で提案している場合は、任せたほうが責任の範囲がシンプルになることもあります。また、職員ごとのIDとパスワードの管理、PCの更新、私物のUSBメモリをつながないといったルールづくりは、費用をかけずに院内で進められる対策です。
福岡でクリニックのネットワーク構築を進めるときの傾向と費用
福岡市内では、都心のビルテナントでの開業と、郊外の戸建て型・医療モールでの開業とで、工事の条件が変わる傾向があります。
天神・博多駅周辺のビルテナントでは、光回線の引き込み経路や工事できる時間帯の確認が先に必要です。東区・早良区・南区などの住宅地に建てる戸建て型では、建築段階から配管と機器の置き場所を計画できるため、駐車場の防犯カメラまで含めた配線を検討しやすくなります。カメラとの同時工事は防犯カメラとLAN工事を同時に依頼する記事で解説しています。
| 内容 | 参考価格 |
|---|---|
| クリニックLAN構築(PC5〜10台・VLAN分離込み) | 200,000円〜+機器代 |
| UTM設置・設定 | 50,000円〜+機器代 |
| UPS+自動シャットダウン設定 | 50,000円〜+機器代 |
| VLAN設計・設定 | 30,000円〜 |
いずれも2026年9月時点の目安で、派遣費10,000円が別途かかります。法人向けの対応範囲はオフィス・テナント向けページ、料金の全体像は工事の費用ページをご覧ください。
クリニックのネットワーク構築でよくあるご質問
Q. 電子カルテのベンダーに任せれば、LAN工事は頼まなくてよいですか?
ベンダーが配線やネットワーク機器まで請け負う場合は、別に頼まなくてよいこともあります。範囲が「システムの設定まで」なら、配線や患者用Wi-Fi、防犯カメラのネットワークは別の手配が必要です。
Q. ガイドラインに準拠したネットワークにしてもらえますか?
ガイドラインへの適合を判断・保証することはできません。院側とベンダーが決めた方針に沿って、ネットワークの分離や機器の設定を具体化するお手伝いをします。対応の最終判断は、院側と電子カルテのベンダーでご相談ください。
Q. 診療を続けながら、既存のクリニックを改修できますか?
できます。休診日や診療時間外に切り替える方法が一般的で、夜間・休日の作業は通常料金の25%増しです。電子カルテが使えない時間が出るため、ベンダーとも日程を合わせます。
Q. オンライン資格確認の回線は、院内の光回線と共用できますか?
共用できるかどうかは導入ベンダーの指示によるため、まずベンダーにご確認ください。接続方式などの要件が定められており、指示に合わせた配線やポートの用意はLAN工事側で対応できます。
まとめ:クリニックのネットワークは「分ける・守る・決めておく」
クリニックのネットワークは、系統ごとにVLANで分け、UTMとUPSで出入口と電源を守り、ベンダーとの役割分担を開業前に決めておくことが土台になります。開業予定日と図面、ベンダーの要件資料をLINEで送っていただければ、工程と概算のたたき台をお返しします。
福岡のLAN工事のご相談はLINEからお気軽に
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