退去日が決まると、内装の原状回復や引越しの手配に追われ、LAN配線や通信機器の片付けは後回しになりがちです。ところが天井裏や床下のケーブル、壁のLANコンセント、回線の解約とレンタル機器の返却は、直前に気づいて慌てやすい項目でもあります。この記事では、原状回復でLAN設備をどこまで撤去するのかの決まり方、回線まわりの手続き、退去日から逆算したスケジュールと費用の目安を整理します。
この記事の結論
- LAN設備をどこまで撤去するかは、賃貸借契約の原状回復条項とビルの工事区分(A・B・C工事)で決まるため、まず契約書と管理会社への確認から始めます。
- 主な撤去対象は天井裏・床下のケーブル、壁のLANコンセント、ラック、Wi-Fi機器、配線カバーで、次のテナントが使える設備は残置を認められることもあります。
- 退去2か月前に範囲の確認、1か月前に業者の手配を目安に進め、費用は10台規模で50,000円〜、20〜30台規模で100,000円〜(派遣費10,000円別途)が目安です。
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事務所退去の原状回復でLAN撤去はどこまで必要?
撤去の範囲は、賃貸借契約の原状回復条項とビルの工事区分で決まります。入居後にテナントが設置したLAN設備は撤去が基本になることが多いものの、最終的には契約次第です。
原状回復とは、退去時に借りた区画を契約で定めた状態に戻すことです。事業用の賃貸借契約では、住宅より借主が戻す範囲を広く定めていることが一般的です。工事区分とは、ビルの工事を「誰が費用を負担し、誰が業者を選ぶか」で分けたルールのことで、一般的には次の3つに分かれます。
| 区分 | 費用負担 | 業者を選ぶのは | LAN撤去に関わる例 |
|---|---|---|---|
| A工事 | ビルオーナー | オーナー(指定業者) | ビル共用の通信設備や共用部の配線 |
| B工事 | テナント | オーナーの指定業者 | 防災設備やビルの設備に関わる部分(天井の貫通部の復旧など) |
| C工事 | テナント | テナントが選んだ業者 | 区画内のLAN配線・コンセント・ラック・Wi-Fi機器の撤去 |
これはあくまで一般的な区分で、どの作業がどの区分に当たるかはビルや契約ごとに異なります。まずは契約書の原状回復条項と工事区分表(区分を一覧にした書類)を確認し、LAN設備の扱いを管理会社に問い合わせることが出発点です。
B工事に当たる作業を自社で選んだ業者に頼んでしまうと、ビル側からやり直しを求められることがあります。
原状回復で撤去する配線・設備の一覧
撤去の対象になりやすいのは、入居後にテナント側で設置した配線と機器です。
OAフロアとは、床下に配線を通せるよう二重に組んだ床のことです。アクセスポイント(AP)とは、有線LANにつないでWi-Fiの電波を出す機器のことです。モールとは、壁や床に沿わせてケーブルを覆うカバー部材のことです。
| 設備 | 撤去時のポイント |
|---|---|
| 天井内のケーブル | 点検口から引き抜く。天井を開ける範囲で手間が変わる |
| OAフロア下のケーブル | 床パネルを外して回収し、元どおりに戻す |
| 壁面のLANコンセント | 本体を外して開口部をふさぐ。クロスの補修は内装工事と調整 |
| ラック | 床や壁に固定した穴の処理まで確認する |
| AP | 天井や壁の取付金具とビス穴を処理する |
| モール | 両面テープの跡やビス穴を補修する |
光コンセントや引込の光ファイバーは回線事業者の設備であることが一般的なので、撤去の要否は事業者に確認します。不要なケーブルを天井裏に残すと、次のテナントが回線を引くときに配管がふさがる原因にもなります(テナントビルで光回線を引き込みできないときの対処法で解説)。
自社で片付けてもよい範囲
床に置いたルーターやハブ、パソコンと壁をつなぐLANケーブルの回収、レンタル機器の梱包は、社内で片付けても問題ありません。撤去がこの範囲だけで、天井や壁に手を入れる配線がなければ、業者に頼む必要はないでしょう。天井裏・床下・壁の中の配線やLANコンセント、ラックの撤去は、業者に任せたほうが安心です。
撤去せずに残す「残置」を交渉できるケース
次のテナントがそのまま使える設備は、オーナーの了承を得て残置できることがあります。撤去費用を抑えられるため、早めに相談する価値があります。
残置とは、退去時に設備を撤去せず、オーナーの了承を得てそのまま残していくことです。認められやすいのは、比較的新しい規格のLANケーブル(Cat6・Cat6Aなど)や壁のLANコンセントのように、次のテナントが設備として使えるものです。反対に、古い規格や行き先の分からないケーブル、故障した機器は撤去を求められるのが一般的です。
ポイント:残置の交渉材料になるのは「どこにつながっているかが分かる記録」です。配線図とラベルがあれば、オーナーも次のテナントに設備として案内しやすくなります。
配線図やラベルの整え方はオフィスのLAN配線整理の費用と進め方で紹介しています。了承は書面やメールで残し、残した設備の管理責任が誰に移るのかも確認しておきましょう。通信設備が整った区画は、オーナーにとってもテナント募集の強みになります(ビル共用部Wi-Fiでテナント獲得を加速する方法も参考に)。
回線事業者側の手続きも並行して進める
LAN配線の撤去とは別に、光回線の解約または移転の手続きと、ONUなどレンタル機器の返却が必要です。撤去工事が要るかどうかも事業者に確認します。
- 解約か移転か:移転先でも同じ事業者を使うなら、移転の手続きで済むことがあります(条件は事業者により異なります・2026年9月時点)
- レンタル機器の返却:ONUとは、光信号をパソコンやルーターが扱える信号に変換する装置のことで、多くはレンタル品です。返却しないと機器代を請求されることがあります
- 撤去工事の要否:光コンセントや引込線を撤去するか残すかは事業者とビルの方針で異なり、立会いが必要な場合もあります
- 電話番号:ひかり電話の番号を移転先で使えるかは、地域や事業者の条件によって変わります
解約や返却の手続きは契約者本人が行うものが多いため、撤去業者の手配とは別に担当者を決めて進めると漏れを防げます。
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退去日から逆算したLAN撤去のスケジュール
退去日の2か月前から動き始めると、ビル側の手続きや回線の切り替えに余裕を持てます。
- 2か月前:契約書で原状回復の範囲と工事区分を確認し、撤去か残置かを管理会社に相談する
- 1か月半前:撤去業者に現地調査を依頼し、範囲・費用・作業日の候補を固める
- 1か月前:業者の手配を確定してビルに工事申請を出し、回線事業者に解約または移転の日付を伝える
- 移転前:新オフィスの回線開通とLAN工事を先に済ませる
- 引越し後〜退去日前:旧オフィスのLAN設備を撤去する
- 退去日前後:管理会社の立会いで確認を受け、レンタル機器は事業者の案内に沿って返却する
新オフィスの開通を先に済ませ、旧オフィスの回線は引越しが終わるまで残しておくと、ネットが使えない期間をつくらずに済みます。新オフィス側の段取りはオフィス移転のLAN工事スケジュール完全版、開通日の組み方は光回線の開通工事とLAN工事を同日に終わらせる段取りで解説しています。
管理会社の立会いと夜間・休日作業の注意点
撤去作業や退去時の確認には、ビル管理会社の立会いが求められるのが一般的です。共用部を通る作業や音の出る作業は、夜間・休日を指定されることもあります。立会いでは次の点がよく確認されます。
- ケーブルの残り:天井裏・床下に不要なケーブルが残っていないか
- 開口部の処理:LANコンセントの跡や天井の貫通部がふさがれているか
- 跡の補修:モールのテープ跡やビス穴が補修されているか
- 元どおりか:開けた点検口や床パネルがきちんと閉じているか
夜間・休日の作業は通常料金の25%増しが目安で、派遣費10,000円は別途かかります。福岡市中央区・博多区の天神や博多駅周辺では建替えに伴う移転が続き、年度末の前後は退去と入居が重なって、ビルの工事申請や業者の日程が混み合いやすい傾向があります。建替え予定のビルからの退去では原状回復の取り決めが通常と異なることもあるため、早めに管理会社へ確認しておくと安心です。
事務所退去のLAN撤去費用と、移転とセットで頼むメリット
費用の目安は、10台規模で50,000円〜、20〜30台規模で100,000円〜です(2026年9月時点・派遣費10,000円別途)。移転先の工事と同じ業者にまとめると、日程調整と機器の移設が一度で済みます。
| 項目 | 参考価格 |
|---|---|
| 退去時のLAN撤去(10台規模) | 50,000円〜 |
| 退去時のLAN撤去(20〜30台規模) | 100,000円〜 |
| 夜間・休日作業 | 通常料金の25%増し |
| 派遣費(全工事共通) | 10,000円(別途) |
天井の高さやOAフロアの有無、ケーブルやラックの量で変わるため、正確な金額は現地調査のうえでお見積りします(料金の一覧は工事の費用ページ)。移転とセットで頼むメリットは次の3つです。
- 日程を一括で組める:新オフィスの開通・配線と旧オフィスの撤去を、一つの工程表で調整できます
- 機器を移設できる:取り外したスイッチ(LANの分岐機器)やAPを、新オフィスで再利用する段取りが組めます
- 窓口が一つで済む:管理会社・回線事業者とのやり取りをまとめられます
移転に伴うLAN工事の全体像はオフィス・テナント向けLAN工事のページにまとめています。
事務所退去のLAN撤去でよくあるご質問
Q. LAN配線は退去時にすべて撤去しなければいけませんか?
契約と工事区分によります。テナントが設置した設備は撤去が基本になることが多いものの、オーナーの了承があれば残置できることもあります。
Q. 管理会社の指定業者でないと撤去できませんか?
C工事に当たる作業なら、テナントが選んだ業者に依頼できるのが一般的です。B工事に当たる場合はオーナーの指定業者が施工するため、区分を事前に確認しましょう。
Q. 退去日までに撤去が間に合わないとどうなりますか?
契約によっては、明け渡しが遅れた期間の賃料相当額などを請求されることがあります。ビルの工事申請にも日数がかかるため、退去の1か月前までに業者を決めておくと安心です。
Q. 自社で買ったルーターやスイッチはどうすればよいですか?
新オフィスで再利用できます。回線事業者から借りている機器と混ざらないよう、撤去前に「返却するもの」と「持っていくもの」を分けておくと安心です。
まとめ:退去のLAN撤去は「範囲の確認」から逆算して動く
事務所退去の原状回復でLAN設備をどこまで撤去するかは、賃貸借契約とビルの工事区分で決まります。残置の交渉や回線の解約・機器の返却も並行して進め、退去2か月前に範囲の確認、1か月前に業者の手配が目安です。費用は10台規模で50,000円〜、20〜30台規模で100,000円〜(派遣費10,000円別途)。「うちの契約だとどこまで必要?」という段階でも、LINEで状況を送っていただければ一緒に整理します。
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