タブレット学習やオンライン授業が広がり、学習塾や英会話教室、プログラミング教室でも、Wi-Fiは黒板と同じくらい欠かせない設備になりました。ところが家庭用のルーターのままでは、授業の開始と同時に数十台がつながる教室の使い方に耐えられないことがあります。この記事では、生徒用タブレットが快適に使え、名簿や成績も守れる教室のWi-Fiの組み立て方と、開校日から逆算した準備の進め方を解説します。
この記事の結論
- 教室のWi-Fiは、授業開始時の一斉接続と動画教材に耐えられるよう、教室ごとに業務用のAPを置くのが基本です
- ネットワークは「講師・事務用」「生徒用」「保護者・来客用」にVLANで分け、名簿や成績を扱うパソコンに生徒の端末から届かないようにします
- 有害サイト対策と帯域の制御を組み合わせ、開校の1〜2週間前には全台を同時につなぐテストをしておくと安心です
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教室のWi-Fiが家庭やオフィスより難しい3つの理由
教室のWi-Fiが難しいのは、短い時間に多くの端末が一斉につながり、全員が同じように動画や通話を使うからです。
- 授業の開始時に一斉につながる:数十台のタブレットが同じタイミングで接続し、教材の読み込みを始めます
- 動画教材を同時に見る:映像授業や解説動画は1台あたりの通信量が多く、台数分が積み上がります
- オンライン授業の配信は上りも使う:教室から自宅の生徒へ授業を配信すると、講師の映像を送る上りの通信が欠かせません(会議室のWeb会議が途切れるときの対策)
家庭用ルーターでは、DHCPの割り当て数が少なめに設定されていることもあります。DHCPとは、つないだ端末にIPアドレスを自動で配る仕組みのことで、配れる数を超えると後からの端末がつながりません。教室のWi-Fiは、ふだんの台数ではなく「授業が始まる瞬間の台数と使い方」で設計します。
学習塾のWi-Fiは「講師・事務用」「生徒用」「保護者・来客用」に分ける
ネットワークは使う人ごとに3つに分け、VLANで互いに行き来できないようにするのが基本です。VLANとは、同じ配線や機器を使いながら、設定でネットワークを独立した区画に分ける仕組みのことです。
| ネットワーク | つなぐ端末 | 設定の考え方 |
|---|---|---|
| 講師・事務用 | 事務用パソコン、講師のパソコン、複合機 | 他の2つからは届かない構成に。名簿や成績はここだけで扱う |
| 生徒用(授業用) | 教室のタブレット、生徒が使うパソコン | インターネットと教材のみ。端末どうしの通信を遮断し、有害サイトを制限 |
| 保護者・来客用 | 保護者や見学者、生徒の私物スマートフォン | インターネットのみ。通信量に上限を設ける |
VLANの仕組みはVLANとは?中小企業が導入するメリット、来客用を分ける考え方は店舗Wi-Fiの客用と業務用の分離でも紹介しています。
名簿や成績を扱うパソコンを生徒用と分ける理由
事務用パソコンには、生徒名簿や成績、保護者の連絡先といった個人情報が集まります。生徒のタブレットと同じネットワークにあると、共有フォルダや複合機に生徒側の端末から届いてしまうおそれがあります。悪意がなくても、ウイルスに感染した端末や興味本位の操作が入口になり得ます。名簿や成績を扱う端末は、生徒用のネットワークから「見えない」状態にしておくのが基本で、医療機関が電子カルテを患者用Wi-Fiと分けるのと同じ考え方です(クリニックのネットワーク構築ガイド)。
有害なサイトへの対策は3つの方法を組み合わせる
ネットワーク側の仕組みと、教材やタブレット側の機能を組み合わせるのが一般的です。1つの方法だけでは防ぎきれないため、利用ルールとあわせて考えます。
- DNSフィルタ:DNSフィルタとは、サイトの住所を調べる段階で、有害なカテゴリのサイトへの接続を止める仕組みのことです。生徒用のネットワーク全体に手軽にかけられます
- UTM:UTMとは、ファイアウォールやWebフィルタなど複数のセキュリティ機能を1台にまとめた機器のことです。教室の出入口でまとめて管理でき、多くはライセンス契約が前提です
- 教材・タブレット側の機能:教材アプリの閲覧制限や、MDMでアプリやサイトを制限します。MDMとは、多数のタブレットの設定やアプリ、更新をまとめて管理する仕組みのことです
制限を強くしすぎると、教材のサイトまで開けなくなることがあります。授業で使うサイトを先に一覧にしてから、制限の強さを決めると運用が楽になります。
一部の端末の動画で全体が遅くならないようにする
全体を遅くしないためには、帯域制御で通信量に上限を設けます。帯域制御とは、ネットワークや端末ごとに使える通信量の上限を決める仕組みのことです。
- ネットワークごとの上限:保護者・来客用に上限を設け、授業用の帯域を守ります
- 端末ごとの上限:業務用のWi-Fi機器には1台あたりの速度に上限を設けられる機種があり、1台の高画質動画で全体が遅くなるのを防げます
- 更新の時間をずらす:タブレットのOSやアプリの更新は、MDMなどで授業のない時間帯に行うよう設定します
上限は授業に必要な速度を確かめてから設定し、教材の動画が止まらない範囲にとどめます。
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生徒用タブレットの一斉接続に耐える、教室ごとのAP配置
APは教室の数だけ置き、天井に付けるのが基本です。AP(アクセスポイント)とは、Wi-Fiの電波を出す親機のことです。1台で複数の教室をまかなうと、壁で電波が弱まるうえ接続も集中します。
- 1教室に1台が目安:20〜30台のタブレットを同時に使う教室なら、一般的に1教室1台から考え、大教室では2台に分けます
- 天井に付けてPoE給電:PoE給電とは、LANケーブル1本で通信と電源を送る仕組みのことで、電源工事なしで天井に設置できます
- 5GHz帯を中心に:混雑しやすい2.4GHz帯は避け、タブレットは5GHz帯につなぎます(Wi-Fiの2.4GHzと5GHzの違い)
- 隣の教室との干渉:隣り合うAPはチャンネルを分け、電波の強さを教室の広さに合わせます
配置の基本はオフィスのWi-Fi 6アクセスポイント配置と台数目安も参考になります。
ポイント:APの台数は「生徒用タブレット+講師の端末+来客の端末」で考えます。生徒の増加を見込み、LANの配線だけは1か所多めに通しておくと、後からAPを増やしやすくなります。
開校・移転から逆算するスクールのWi-Fi導入スケジュール
光回線の開通に時間がかかることがあるため、物件が決まった時点から逆算して動くのが安心です。時期は目安で、物件や内装の工程によって前後します。
- 物件の契約前(開校の4か月ほど前):ビルに光回線が来ているか、教室まで引き込めるかを管理会社に確認します
- 光回線の申し込み(3か月前が目安):開通工事の日程は混み具合で変わるため、早めに申し込みます
- レイアウトの決定(2〜3か月前):教室・事務スペースの配置から、APとLANコンセントの位置を図面に落とし込みます
- 内装工事中の配線(1〜2か月前):天井や壁が開いているうちに、APや防犯カメラへの配線を済ませます
- 機器の設定(2〜4週間前):VLAN・フィルタ・帯域制御を設定し、タブレットを登録します
- 一斉接続のテスト(1〜2週間前):全台を同時につなぎ、動画教材やオンライン授業を本番と同じ使い方で試します
福岡で開校するときのポイント
福岡市内でも、早良区の西新や南区の大橋、東区の千早・香椎など、駅に近いテナントで教室を構える場合は、ビルの回線設備を早めに確かめておくと安心です。新年度に合わせた開校では、準備の時期が、一般的に開通工事の混み合いやすい2〜4月の引っ越しシーズンと重なります。開校日が決まったら、内装より先に回線の手配を始めるくらいが安心です。築年数の経ったビルでの引き込みの確認はテナントビルで光回線を引き込みできないときの対処法で解説しています。
自分でできること・業者に頼む目安と費用
生徒数人の個別指導で、タブレットも数台なら、今のルーターの設定の見直しで足りることもあります。教室が複数ある、タブレットが十数台を超える、ネットワークを分けたい場合が業者に頼む目安です。
- ゲスト用Wi-Fiの機能を使う:家庭用ルーターにも、来客の端末を他の機器から切り離す機能を持つ機種があり、生徒用に使えば事務用パソコンと分けられます
- 更新の時間を決める:タブレットの自動更新を授業時間外に設定します
- 本部の指定を確認する:フランチャイズで本部が機器や構成を指定している場合は、その範囲は業者に頼まなくてよいこともあります
| 内容 | 参考価格 |
|---|---|
| AP増設(既設LANから分岐)1台 | 25,000円〜+機器代 |
| VLAN設計・設定 | 30,000円〜 |
| UTM設置・設定 | 50,000円〜+機器代 |
| UPS+自動シャットダウン設定 | 50,000円〜+機器代 |
いずれも2026年10月時点の目安で、派遣費10,000円が別途かかります。UPSとは、停電時にバッテリーから電気を送り、機器を安全に止める時間をつくる装置のことで、事務用パソコンやネットワーク機器を守ります。法人向けの対応内容はオフィス・テナント向けのLAN工事、ほかの工事は工事の費用ページをご覧ください。
学習塾・スクールのWi-Fi導入でよくあるご質問
Q. Wi-Fiの名前は教室ごとに分けたほうがいいですか?
教室ごとではなく、講師用・生徒用・来客用といった使う人ごとに分けるのが一般的です。業務用のAPなら、全教室で同じ名前を出しておけば、タブレットを持って移動しても近いAPにつながり直します。
Q. 生徒の私物のスマートフォンもつながせて大丈夫ですか?
つなぐ場合は、授業用とは別の来客用のネットワークにし、通信量の上限とフィルタをかけるのが安心です。つなぐかどうか自体は、教室の方針で決めます。
Q. 授業に影響しない時間に工事できますか?
できます。学習塾は午後から夜の授業が中心のため、午前中の作業で影響を抑えられることが多いです。夜間・休日の作業もご相談ください(料金はお見積もりでご案内します)。
Q. 移転のとき、今の機器は使い回せますか?
業務用の機器なら使い回せることが多いです。家庭用ルーターや古い機種は、同時接続の台数やVLANへの対応を確かめてから判断します。
まとめ:教室のWi-Fiは「授業が始まる瞬間」に合わせて組み立てる
学習塾やスクールのWi-Fiは、授業開始時の一斉接続に耐える教室ごとのAP、講師・生徒・来客で分けたネットワーク、有害サイト対策と帯域の制御の3つで組み立てます。開校や移転が決まったら、回線の手配から逆算して動き、開校前に全台でテストしておくと安心です。教室の数とタブレットの台数をLINEで送っていただければ、構成と概算をお返しします。今の機器で足りる場合は、そうお伝えします。
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